肉眼で見えるかもしれない人工衛星たち

夜の空には何が見えるでしょう。恒星、月、惑星、そして……人工衛星! 人工衛星の役割はさまざま。通信のための衛星、地球や宇宙を観測する衛星、そして、宇宙飛行士が長期滞在する宇宙ステーションも、地球をまわっている「人工衛星」です。 この記事では、肉眼で見えるかもしれない人工衛星やその他の宇宙機をご紹介します。

いちばん見やすいISS

最も有名で、初心者にもおすすめしやすいのが ISS(国際宇宙ステーション)です。 ISS は、各国の宇宙飛行士が長期滞在しながら実験や観測を行うための、宇宙空間の「研究所」です。 巨大な太陽電池パネルが太陽の光を反射し、「宵の明星」の金星よりもさらに明るく輝くこともあります。

「まず一度人工衛星を見てみたい」という方は、とりあえずISSからスタートしてみてください。

まさに銀河鉄道! スターリンクトレイン

近年特に注目度が高いのが、 SpaceX のスターリンク衛星が列をなして見える現象「スターリンクトレイン」です。

スターリンクは、地球規模の通信サービスを提供するための通信衛星群。海上や砂漠など、通信インフラが整っていないところでも衛星経由でインターネットが使えるようにすることを目的としています。 最近は日本で発売されているスマートフォンの中にも、スターリンク衛星と直接通信のできるものがあります。

地球全体をカバーするために、スターリンク衛星は数千基規模が稼働しており、今でも軌道投入が続いています。投入されるのは一度のロケット打ち上げで数十機。 ロケットから放出された衛星群は、少しずつばらけてそれぞれの持ち場となる軌道へと移動していきます。完全にばらけるまでの間、衛星たちは列をなして見えることがあり、その銀河鉄道のような光景は「スターリンクトレイン」と呼ばれます。

ただし、スターリンクトレインは常に見えるわけではありません。 打ち上げの時期や軌道条件に大きく左右されるため、見えるかどうかはミッションごとに異なります。

中国宇宙ステーション(CSS)

中国宇宙ステーション(CSS)も、肉眼で見える代表的な宇宙機のひとつです。 ISS より観測条件がやや限られる地域もありますが、条件が揃えばマイナス1等級前後の明るさで見えます。

CSS も、宇宙飛行士が滞在しながら各種実験や運用を行う宇宙ステーションです。 建設は少しずつ進んできており、構造物が増えるにつれてより明るく見えるようになってゆきます。

ハッブル宇宙望遠鏡

軌道上から遠い宇宙の写真を人類に届けてくれるハッブル宇宙望遠鏡も、肉眼で見ることができる衛星のひとつです。

ただし、ISS と比べると見える地域やタイミングが限られています。 軌道傾斜角が低いため、緯度の高い地域では、全く見えなかったり、仰角が低いまま通過してしまうことがあります。たとえば、東京では最も仰角が高いときでも30°前後。等級も2等級前後で、本州の都市部では少し見つけにくいかもしれません。

ニュースで話題の宇宙機が見えるかも?

ISS や CSS、ハッブル宇宙望遠鏡は、常に軌道上にあるため、定期的に肉眼で見えるチャンスがやってきます。 こういった運用中の衛星だけでなく、新たに打ち上がった宇宙機が見えることもあります。

たとえば、宇宙ステーションに物資や宇宙飛行士を運ぶ宇宙船は、条件しだいで肉眼で見えることがあります。 しかも、宇宙ステーションとのドッキングの前後には、ランデブー飛行が見られることもあります。 いつもは単独で通過する宇宙ステーションの近くに、すこし小さなもうひとつの光が寄り添うように動いて見えます。

参考として、SpaceStationAR の作者が撮影した、スペースシャトルアトランティス号 (退役済み) と ISS のランデブー飛行の動画をごらんください。

ぜひ、宇宙開発の最先端の現場を見てみてください。

そのほかにも見えることがある衛星たち

こうした代表的な対象のほかにも、時期によっては各種補給船や貨物宇宙船、比較的大型で明るい地球観測衛星などが見えることがあります。 実際に対象となるかどうかは、「軌道上にあること」だけでなく、「現実的に肉眼で見える可能性があるか」を重視して決まります。

また、光害の少ない地域では、より小さな衛星も見えます。 離島や山奥などでは、特に予報をチェックする必要もなく、ただぼーっと夜空を見上げているだけでも、たくさんの小さな衛星たちが星空を横切っていくのを見ることができます。

まずは ISS から! 衛星ウォッチングをはじめよう

これから人工衛星観察を始めるなら、最初は ISS と Starlink を中心に見るのがおすすめです。 知名度が高く、観測の目的もはっきりしていて、空で見つけたときの満足感も大きいからです。

その後、見え方に慣れてきたら CSS やハッブル、そのほかの明るい衛星にも対象を広げていくと、観察の幅がぐっと広がります。